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最高裁判所第一小法廷 昭和29年(あ)1922号 決定 1954年11月18日

主文

本件上告を棄却する。

理由

弁護人池田克の上告趣意第一点は、原審で主張も判断もない単なる訴訟法違反の主張であり、同第二点は、量刑の非難で、刑訴四〇五条の上告理由に当らない。(元来刑訴三三九条一項四号の規定に「被告人たる法人が存続しなくなったとき」とあるのは、法人が総ての関係において終局的に存続しなくなったときをいうものであって、会社が解散しても商法一一六条の規定により清算の目的の範囲内においてなお存続するものと看做される場合のごときを含むものではない。ことに、商法九五条、四〇六条は、会社が解散しても、会社を継続しうる場合のあることを認め、また、会社更正法三一条は、清算若しくは特別清算中又は破産宣告後において株式会社の更生申立を認めているから、これらの点から見て、本件のような株式会社の株主総会の決議に因る解散だけでは会社が存続しなくなったと認めることはできない。そして、会社が本件のようにその業務又は財産に関する違反行為に因る財産刑に該る事件の訴追を受けるがごときは、商法一二四条一項一号にいわゆる清算人の現務中に包含するものと解するを相当とするから、本件のような解散前の違反行為については清算結了の登記あると否とを問わず、清算人において違反事件の結末を終了するに至るまで、被告人会社はなお存続するものといわなければならない。されば、原一、二審の訴訟手続には、所論の違法を認むることができない。)また記録を調べても本件につき同四一一条を適用すべきものとは認められない。

よって同四一四条、三八六条一項三号により裁判官全員一致の意見で主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 斎藤悠輔 裁判官 真野 毅 裁判官 岩松三郎 裁判官 入江俊郎)

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